幸せそうな顔をみせて【完】
「何かご不満がありましたか?」


「いえ、そんなことはないです。前の提案書もとてもいいものだと思いました。そして、新商品の性能も素晴らしいのも分かります。でも、もう少し価格の方で譲歩して貰えないでしょうか?」


 小林主任の提案書は素晴らしいものだと思うし、でも、価格は強気なものだった。商品内容が良ければすんなりと契約になると思ったけど、そんなことは甘かったと思い知る。仕事というのはそんなに甘いものではない。でも、ふと思うのが緑川さんじゃなければこの契約が締結していたかもしれないということ。でも、緑川さんはキッチリと最後まで詰めてくる。ニッコリと穏やかに微笑んでいるけど揺るぎそうもない強さを感じさせていた。


 ここはどうしたらいいのだろう。一度持ち帰ってから再度検討するのがいいのだろうか?こんな時に副島新ただったらどうするだろう?一度、持ち帰ってからでなく、この瞬間に契約を決めるのだろうか?


 私が小林主任に出した提案書ではもう少し価格は安く提案してあった。でも、それを小林主任は内容を見直すことで価格を下げることはしなかった。


『ウチの社の商品は他社ではないくらいにいいものだから自信を持って営業して来い』


 これが小林主任の口癖。自信を持つことが大事だといつも言っている。


「私どもは自社の商品に自信を持っておすすめさせて貰っています。ですので、出来ればこの提案書通りの価格でお願いします」


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