幸せそうな顔をみせて【完】
 美味しいと感じた久しぶりの食事だったと思う。この数日、食事をするのは無理やりという感じで苦しいものだった。でも、今日は本当に美味しく感じた。私が勝手に誤解して、勝手に食事が喉を通らないという状態をつくったのだけど、精神的に厳しくなると食事すら出来なくなるというのを知った。それは私が副島新が本当に好きだということに他ならない。


 だから副島新が作ってくれた雑炊の味も美味しいけど、それ以上に副島新の気持ちが嬉しく美味しく感じさせていた。


「ごちそうさまでした。本当に美味しかった」


「それはよかった」


 副島新は私のお椀の中が空っぽになったのを満足そうに見ると、自分のお椀と一緒に片付け始めた。作って貰ったのだから片付けくらいはと思って立とうとすると副島新はそれすらも制止する。


「そんなにないから葵はそのままゆっくりしてて。デザートに買ってきたプリンかゼリーかいる?」


 スーパーで買い物をしている時は自分がご飯を食べることなんか出来ないと思っていたので、口当たりのいいプリンとかゼリーとかを買っては来ていた。でも、今はお腹がいっぱい。


「ううん。今はいい?」


「そっか。じゃ、先に片付けるからそこでゆっくりしてて」


 私が頷くと副島新は二人分のお椀をもってキッチンに行くと手際よく片付けてしまう。そして、私がそんな姿に見とれている間にすっかりと片付けを終わらせて私のいるリビングに戻ってきたのだった。


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