幸せそうな顔をみせて【完】
「俺とやり直す気はない?」


「ないわ」


 副島新との間にあった誤解が解け、今、私の中での一番は副島新。



「即答。でも、そうだと思っていた。金曜日の葵と今日の葵は全く違う。今日の葵を見れて良かったと思う。大学の時からずっと大事だと思っていて、ずっと一緒にいるものだと思っていたけど、結局は俺は仕事を選んだ。
 そのことは後悔してはないけど、葵と再会して気持ちが揺れたのも事実。でも、今は葵が幸せであって欲しいと思うのは大学を一緒に過ごした友達としての気持ちが強い」


 もしも、私が今の会社に就職しなかったら、今も私の横には尚之がいるかもしれない。こんな風に別れた今でも懐かしいと思うくらいだから嫌いじゃない。お互いに仕事を選び、結果的には別れることにはなったけどそれでもいい思い出にはなっている。それに、尚之が言ったように私も尚之には幸せであって欲しい。それは元カノとかではなく、大学の楽しかった時間を共有した友達でもあるから…。


 時間の流れは変わらない。それを私は感じる。


 尚之のことは嫌いじゃない。むしろ人間的には好きだと思う。でも、今も男として見れるかというとそんなことはない。私の中での『男』は唯一。副島新だけだから。


「ありがとう。私のことを大事に思ってくれていて」


「ああ。大事だよ。でも、これと今回の仕事は別だから」


「わかってる。でも、あの説明を聞いて気持ちがぐらついたでしょ」
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