幸せそうな顔をみせて【完】
 睡眠に逃げるという作戦に副島新も同意はしたものの、私が副島新のベッドを借りるのは申し訳ないし、彼のベッドだと思うと恥ずかしさで寝れないと思った。


 とりあえず寝るという妥協点を見つけたけど、だからと言ってこれで問題点が解決したわけではない。自分で言っておきながら私は自分の首を絞めたかのように感じた。帰ると言えばよかったかもしれないけど、今のこの状態でそんなことは言えない雰囲気だった。


「私がソファに寝る。ベッドを占領するわけにはいかないもの」


 一緒に寝るという選択肢はないから、選ぶのは二択。副島新のベッドかリビングにおいてあるソファ。三人掛けのソファは私が寝るのに十分な広さがある。ベッドは副島新が使って、私がソファというのが一番いいと自分でもしっくりとする答えだった。足を延ばしても十分な余裕がありそうだった。


 だからそう言ったのに、副島新はまた顔を曇らせる。何がどう気に入らないのだろう?


「却下。彼女をソファに寝せて自分がベッドに寝る男とかありえないだろ」


 それなりに考えて出した答えだったけど、即座に切り捨てられた。でも、私がベッドを使うというのもなんだか悪い。それなら、このフワフワで寝心地の良さそうなソファに寝る方がどれだけゆっくり寝られるか分からない。


 でも、そっと探るように上を見ると私の視線は副島新の視線に囚われてしまう。まるで蛇に睨まれた…カエル?いや、ちょっと可愛らしくヒヨコと言っておこう。


 物凄く顔が怖い。

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