幸せそうな顔をみせて【完】
 尚之との食事は頭になかった。でも、小林主任と中垣主任研究員との食事はもっと頭になかった。でも、この状況で断るのもどうかと思う。でも、私がいたら邪魔ではないのだろうか?どう答えるべき??


「お邪魔ではないですか?」


「別に邪魔ではないけど、瀬戸さんが気を使うなら先に送るけど」


 中垣主任研究員の方を見るとまた目を閉じて半分寝ているような状況だった。それでは私がついて行ってもいいのか悪いのかさえ分からない。本当にどうしたらいいのだろう。


「腹が減ったから支社へ戻るのはその後にしてくれ」


 眠っているかと思った中垣主任研究員の口から零れた言葉は絶対的で、その言葉に小林主任は『だってさ』とだけ言った。私が小林主任と中垣主任研究員と一緒に食事をすることが決まった瞬間だった。


「行先はどこにします?近くの定食屋でいいですか?」


「どこでもいい。食べ終わったら支社に戻るより先に研究所に送ってくれ」


「了解。瀬戸さんも定食屋でいい?女の子の好きそうな店は中垣さんがダメだし、懐石とかを出すような和食の店は時間が掛かる。瀬戸さんを連れて行くのには少し申し訳ないけど、我慢してくれる?」


 女の子の好きそうな店って小林主任が言っているのはパスタとか洋風のランチの店だと思う。そんな女の子の集まるような店にこの二人と一緒に入るなんて拷問に近い。きっと視線はチクチク感じるだろうし、ただでさえ緊張しそうなのに、その上に鋭い視線を感じながらの食事は拷問だろう。
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