幸せそうな顔をみせて【完】
6 溺愛かも
 そんなことを思いながら私は副島新のベッドに横になり天井を見上げる。見慣れない天井にはカーテンから差し込んでくる夕焼けの光が真っ直ぐな線を引いていて、今日という日の終わりを告げているように見えた。昨日の夜からの激動の時間があっという間でふと目を閉じるとこれは夢ではないかと思うくらいの出来事なのは間違いない。

 
 あの副島新が私の彼となった。


 副島新の綺麗な顔を思い浮かべると自分でも分かるくらいに身体が熱くなってくる。恋をしているというのを感じていた。


 熱いけど、節々の痛みも、頭痛も腹痛もない。熱があるのは間違いないから身体の怠さは感じる。でも、それだけだった。ちょっとフワフワするけど、動けないほどでもない。風邪じゃないのはなんとなくわかる。


「着替えたか?喉は渇いてないか?」


 そんな言葉と共に寝室に入ってきた副島新の手には水のペットボトルが持たれて。それは昨日も貰った私の好きな銘柄だった。どれだけストックしているのか分からないけど、私はこの水のサラッとした感触がとっても好き。


「いる」


 そう言って起きようとすると、副島新はベッド脇にやってきて、そっと起き上がろうとする私の身体を支えると、自分の身体に寄りかからせ、そっと、肩を抱くようにしながら、キャップを開けた水のペットボトルを渡してくれた。


「自分で飲めるか?」


 私が頷くと、飲みやすいようにペットボトルを持っている私の手に副島新はゆっくりと手を添えたのだった。
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