幸せそうな顔をみせて【完】
 未知と香也子は私の携帯を酔った勢いで取り上げて、高校生も吃驚するくらいにキャーキャー言っている。なんでこんな風にメールが入ってくるのだろう。確かに今度食事でもと誘われたので、もう一度くらい会ってもいいかなって簡単な気持ちでアドレスを教えた。

 
 でも、それはいつも使ってないサブアドレスの方だったから気にも止めてなかった。



「『素敵な和食のお店を教えて貰いました。よかったら一緒にどうですか?』ですって。これは行くしかないわよ」


「でも、仕事あるし」


「仕事は副島センセイにお願いしちゃって、これはデートを頑張るべきよ。葵もラブラブな生活をしないと」


「却下」


 そんな言葉に振り向くと、副島新はビールを飲んでいる。まるで水を飲むかのように勢いよく流しこんでいる。もっと味わって飲めばいいのにと思うくらいに飲み干してジョッキをテーブルの上に置くと私の方をしっかりと見据えた。



「葵は俺のものだから。っていうかお見合いとか…マジでありえないし」



 いきなりの俺様発言に私を初め、周りは一気に音を失う。


 明らかに機嫌は悪く。私を見る目はブリザードを纏っているようだった。それにしても俺様発言されるような関係になった覚えは全くない。それにいつもの丁寧な口調がどこかに行ってしまっていた。だから、私はまたまた吃驚して目を見開いてしまう。

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