声紋
4 1980年1月15日

良太現る

 結局夢香は晋と歌い合って1日過ごし、翌日の朝を迎えていた。
 朝9時。晋と夢香はまだソファで仲良く眠っていた。
 すると一人の若者が鍵を開けて入ってきた。晋の高校の後輩で、今ではバンドのメンバーとして活動をしているベーシストの良太だ。

良太「チワーっす。アレ、晋さんここで寝てたんだ・・・ってか女がいる。晋さん、晋さん」
 
 晋が女性と寝ている。しかもかなり幼い娘と。
 その様子を見て一瞬びっくりした良太だったが、奥手で硬派な晋が、ましてやロリコン嗜好では絶対ないとわかっているので連れの女ではないと確信していた。 
 良太は晋を起こす。

良太「晋さん、チワー・・・ね、この子もしかして妹?」

晋 「ん?・・・良太か。ああ、この子は迷子だ」

良太「迷子?」

晋 「そう。フッ・・・天使が迷子になっちまったみたいだ」

良太「マジすかそれ?」

晋 「まあ、半分冗談で、半分は本当だ」

良太「どういうことすか?」

 晋は良太に一昨日の夜からの経緯を話した。そして途中で夢香が起きた。

良太「あっ。起きた・・・おはよう天使ちゃん」

夢香「うん、おはよ・・・あれ?誰だっけ?」

良太「ああ、俺ね、良太。黒川先輩とバンド組んでるんだよ。よろしくな天使ちゃん」

夢香「うん。でも天使ちゃんじゃないよ。夢香よ」

良太「OKOK、知ってるよ」

黒川「夢香、何か食べようか?」

夢香「うん。昨日のパンがいい。あっ・・・晋、おはよ」

黒川「ああ、おはよう」

良太「えーっ、晋!?お前、すごいな。晋さん大分先輩だぞ」

夢香「ん?・・・ダメ?じゃあ晋兄ちゃん?」

黒川「いいよ、晋で。兄さん呼ばわりされる方が困る」

良太「そ、そうっすね。じゃあ俺も良太でいいよ。な、夢香」

夢香「うん」

黒川「良太ワリぃ、タマゴとツナのサンドイッチと後適当にパン系買ってきてくれないか?良太も食べてないなら一緒にさ」
 
 晋が1000円札を良太に渡す。

良太「どうもッス。飲み物も何か買います?」

黒川「コーヒーとココアあるから俺らはいいわ。もし飲みたきゃ良太の分は買っていいよ」

良太「あ、俺も一緒にコーヒーでイイッす」

黒川「作っとく」

良太「じゃあ、ちと行ってきます」

 良太はコンビニに出かけていった。

夢香「優しい子分ね」

黒川「フッ、子分って・・・。まあ、いい奴だから夢香も好きになるよ」

夢香「うん、好き~」

 一日過ごして晋は夢香の言動や行動パターンをすっかり理解していた。
 しかしながら、晋が簡単に女の子と打ち解けていることも珍しいことであるという事を付け加えておこう。
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