ご懐妊は突然に【番外編】
朝目覚めると身体がだる重い。

ここのところ、午前中は体調の悪い日が続いている。

しかし妊娠が公に出来ない今『サボりじゃないです!つわりです!』などと言えるハズもなく、気持ちを奮い立たせて出社する。

倦怠感とたたかいながら仕事をしていると「あれえ、小森ちゃん、顔色悪くなーい?」と声を掛けられた。

振り向くと先輩社員の小坂総一郎氏、通称「総さま」が私の顔をジッと見つめている。

「ちょっと、寝不足で」

私は唇の端を上げて無理に笑って見せる。

「なんだよそれー!惚気か?!夜は眠らせてもらえないの?じょ…」常務に、と言う前に私は咄嗟に総さまの口を手で押さえた。

「小坂さん、セクハラです」私は上目でジロリと睨みつける。

しかし総さまは陽気にあははーと笑っていて全く気にする様子はなかった。

「本当二人とも仲がいいわねぇ」

斜め向かいに座ったクールビューティーな先輩、菊田さんが溜息交じりに言う。

ちなみに菊田さんは総さまと同期の総合職で、バリバリのキャリアウーマンある。

「だけど仕事中は控えたら?」

「す、すみません」ビシっと注意を受けて私と総さまは目を合わせ肩を竦めた。


「遥、今日総さまとジャレてて、菊田さんに怒られてたでしょー」

社員食堂で例のごとく同期三人でランチを食べていると香織に冷やかされる。

「だって総さまがちょっかい出してくるんだもん」私は不本意そうに唇を尖らせた。

「へえ、あの話本当なのかな」

意味深な発言をして、ユミはチビリとご飯を食べる。

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