ご懐妊は突然に【番外編】
「なによ、その噂って」香織は興味津々で身を乗り出して尋ねる。

「菊田さんは総さまを狙ってる、ってもっぱらの噂よ」

「ええ?!」まさかのゴシップネタに私と香織は声を張り聞き返す。

「ほら、あの二人って同期じゃない?入社当初から菊田さんは彼氏も作らず総さま一筋らしいのよ」

「でも、菊田さんって仕事も出来て美人じゃない?どうして女好きの総さまが靡かないのかな」私が顎に指を添えて尋ねる。

「一人の女性に縛られたくないんじゃない?下衆だから」

ユミの毒舌に私と香織はうーん、と頷き納得した。

「それよか遥、あんた全然食べてないじゃない。いつも大食いのくせして」

香織に鋭く指摘されて私はドキっとした。

本日私が選んだメニューはきつねうどん、だけど、3分の2も食べていない。

「食欲がなくて」私は曖昧にはぐらかす。

「まさか…」と言って香織がハッとした表情で呟いたので再び鼓動が早まった。

「ダイエット?」

香織の見当違いな推測に思わずズッコケそうになる。

「ま、まあね。最近食べすぎちゃって」

「遥はいつも食べ過ぎでしょー。幸せ太りなんじゃないのー」

ユミは両手を添えてお上品にお茶を一口飲んだ。

私は誤魔化すように、あははっと空笑いする。

結局気分は良くならずに、ランチは半分以上残してしまった。
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