ご懐妊は突然に【番外編】
5月某日

出産予定日を一週間近く過ぎた麗らかな日だった。

すっかりお腹も大きくなって、双子ちゃんたちの胎動も頻繁に感じる今日この頃。

食欲も止まらず、最近では匠さんの二倍の量は平らげている。

もし大食い選手権に出たら、優勝は無理でも今なら爪痕くらいは残せるかもしれない。

匠さんを送り出した後、のんびりお掃除をしていると、お腹が時折痛む。

朝食を食べ過ぎたかな。

しかし、今朝はご飯は三膳ほどしか食べていないハズだ。

お掃除を中断すると、私は一旦ベッドに倒れ込んだ。

しかし休んでいても一向に良くならないばかりか、痛みは激しくなるばかりだ。

ああ、ついに来たか…と思った。

陣痛が始まったようだ。

入院に必要なものは事前に全て揃えてある。

その他に財布や化粧品、母子手帳など身の回りの物を動けるうちにバックに纏めた。

念のため、匠さんに連絡を入れておいたが留守電だったのでメッセージを残しておく。

その後、ママとお義母さんのそれぞれに連絡をすると、タクシーを呼んで病院へと向かった。


「産まれそうですか?」

担当の女医は相変わらずの無表情のままで尋ねる。

「産まれそうですね」

陣痛の痛みで私はグッタリしている。

そのまま個室に連れて行かれてるとベッドの上でうずくまった。
< 58 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop