ご懐妊は突然に【番外編】
波のように襲ってくる陣痛に私はジッと耐え忍ぶ。

気を少しでも紛らわせるため、窓から外の景色を眺める。

病院の前の道を、通行人が行きかっていた。

携帯電話で話しながら、肩で風をきって偉そうに歩いているあの若い男の子にこの陣痛の痛みをすり替えたら、きっと地面をのたうちまわるだろう。

なぁんてくだらない妄想で痛みを紛らわしてみる。あんまり効果はないけど。

病院のお昼ごはんは大好きなから揚げだったけど、お腹が痛くて身体が受け付けなかった。


お昼を過ぎた頃に、ママと義母さんがお見舞いにやってきた。

予測はしていた。

が、この2人が集まると想像以上にうるさかった…。

「うちの主人が双子家系なんですよえ、実は主人も双子の兄がいてねえ」と、ママ。

「あらあ!じゃあ、お父さまのDNAに感謝しないとねえ!」お義母さんも陽気にホホホっと笑う。

この2人は今でこそ境遇は違えど、裕福な家で産まれ育ったという共通点があり、気が合うようだ。

その横で、私は敵に遭遇したアルマジロのようにうずくまり微動だにしない。

「大丈夫ー?遥さん」

ママがはのんびりした口調で尋ねる。

「…ダメかも」

定期的に襲ってくる陣痛の波に私は身悶える。

「遥さん!ここからよ!ファイト!」

お義母さんが激励してくれる。

「腰をさすると楽になるわよー」

ママとお義母さんはお喋りしながらも、申し訳程度に交代で私の腰をさすってくれた。
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