ご懐妊は突然に【番外編】
「それは…おめでとう」

私は驚きのあまり、ありきたりの言葉しか口に出来なかった。

燁子さんは排卵に少々問題があって妊娠しづらい体質らしい。

そのため子どもは諦めていると聞いていた。

それが、まさかのご懐妊とは。

「ありがとう。私もね、遥さんには直接会って伝えたいって思ったんだ」

燁子さんは照れててへっとはにかんだ。

「ありがとう。本当に嬉しいよ」

感動のあまり、目尻に涙が滲んだので慌てて指で拭った。

「今ね、三ヶ月に入ったの。12月13日が予定日なんだー」

「そっか、楽しみだね。女の子と男の子どっちがいい?」

「この際、どっちでもいいやー」と言って燁子さんはケラケラ笑う。

「でもさ、ちょっと不安でもあるわけ。だって私達が親になるわけでしょ?」

燁子さんはサンドウィッチをパクりと摘まむ。

「大丈夫よ、燁子さんなら」

きっと明るく元気の良い子に育つに違いない。

「まあね、私は多分大丈夫だと思うんだけど、問題は父親だよ」

燁子さんは肩を竦めた。

「…あー、うん」

上手い言葉が見つからず、誤魔化すようにルイボスティーを飲んだ。

「でも、匠さんも父親をやってるんだから大丈夫だよ!」

「匠ちゃんは昔っからしっかりしてるもん。何だかんだ言って面倒見いいしさ」

「…まあね」

確かに双子の実弟も昔からよく懐いていた。

その時、キャーキャー騒がしい声が聞こえてきた。

振り向くと圭人と英茉がこちらへ向かってパタパタと走ってくる。

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