ご懐妊は突然に【番外編】
事なかれ主義の私もさすがにブチ切れた。

浮気現場を取り押さえ、離婚する決意を固めた。

勿論、たっぷりと慰謝料をせしめてね。三億円くらい。

匠さんが出掛けると言った休日に、実家へ帰るふりをして、泳がせることにした。

双子達は実家に預けて、私だけがコッソリ三鷹の新居に舞い戻る。

家の外で張っていると、案の定匠さんは大きめのショルダーバッグを持ち家から出てきた。

そのまま自家用車に乗り込むとフラリとどこかへ出掛けていく。

私はバレないようタクシーに乗ってコッソリ後をつけた。

信じがたかったが匠さんは車を二子玉川駅近くのパーキングに停めて向かいのデザイナーズマンションへと姿をくらませた。

…嘘でしょ?

現実を目の当たりにすると、バットで頭を殴られたようなショックを受けた。

しかし、それと同時に怒りがフツフツと腹の底から湧き上がってきたのだった。

そりゃあ、若かりし頃は節操なく女とチャラチャラ遊び歩いていた。

だけど、結婚もして子供も産まれてそれなりに落ち着いたと思っていた。

信じてたのに…!

私は頭の中が真っ白になり、匠さんの後を追ってフラリとデザイナーズマンションへと入っていった。

しかしながら、何階の何号室に入ったのかがわからない。

エレベーターの電光表示は5階で止まったままだ。恐らく先に乗った匠さんはそこで降りたに違いない。

私も後を追って5階まで上がっていく。

チンとベルが鳴りエレベーターの扉が開いた。

5階に降り立つと、目の前にはドアが二つあった。

どちらかの部屋に匠さんいるはず。

一方の部屋には『有限会社Sweet angels』という表札がかかっている。

何の会社だ…と思わず突っ込みそうになるほど怪しげだ。きっと反対側の部屋にいるに違いない。

その時、不意にエレベーターのドアが開いた。
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