暫定彼氏〜本気にさせないで〜
「やっぱり話は本当だったって事か…。」


志賀が独り言のように呟く。


私だって信じたくないけど今の状況ではそう思うことが一番自然だ。


陽日はどうやらうちの会社を吸収合併しようとしている会社の関係者じゃないかというものだった。


うちの会社の経営状況を探るべく潜り込んでいたのでは?と言う話だった。


例の如く、志賀が役員フロアのトイレにて仕入れてきた情報だから実際は分からないし、まだ社内でも大きく噂にはなっていない。


ごく一部の役員が言ってたってだけだけど………。


思い返すと確かに陽日は新卒で入社したのではなくて、途中からうちの会社にやって来ていた。


グループ会社から研修で来たとばかり思ってたけど、本人にちゃんと聞いた事はなかった。


周りの人達にしても、陽日に対して何の違和感もなく接していたし


第一、あのルックスだし仕事も出来るし、何よりも人当たりの良さで瞬く間に社内での人気を確立していた。


だけどーーー


もしかしたらそれは色んな情報を得るための手段だった?


色んな人と接点を繋げて?


企業買収で本当にそこまでするのだろうか?


そうだとしたら、一つの疑問が浮かび上がる。


なんで、私に声を掛けた?


あの時、非常階段で告白してきたのは単に偶然の事なの?


それともーーーー


あの告白も情報を得るための手段だった?


陽日と初めてのキスをした時、俺の気持ちだからといって唇を重ねた。


あの優しいキスも全て嘘だった?


有力な情報を得るための手段の一つだったのだろうか……


陽日はちゃんと話すから信じて欲しいって言ってたけど……


未だ何も連絡はない。


疑い出せばキリがない。


信じたい気持ちはもちろんある。


それでも疑いを持ってしまうには理由がある。


だって私はーーーー


















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