暫定彼氏〜本気にさせないで〜

ベッド際にあるカーテンの隙間から差し込む陽の光を微かに浴びて、私の頭の中でリフレインする言葉。


ーーーー青天の霹靂。


この様子だときっと空は青い。


カーテンを開けるとぱぁーっと陽が射し込んで一瞬で部屋が明るくなるだろう。


間違いなくいい天気だわ。


けれどその柔らかな陽を私は浴びる訳にはいかない。


そう、だって私は昨日、突然、告白してきた会社の後輩に抱きしめられながら寝ているんだもん。


それに気づいた今、まさに青天の霹靂。


全身に雷が走った気がした。


何故なら、耳元で


「よく、眠れた…沙紀さん？」


と、少し掠れて頗るセクシーな加藤陽日の声を間近に聞いたから。


きっと彼のファンに取ってはレア物の声だ。


録音して永久保存、そしてアラーム音声に設定するのは間違いない。


しかし私は生憎、今その声についてどうこう考えるどころではない。


緊急事態、いや、非常事態だよ。


「えっ、ああ…うん。眠れた……かな。」


眠れたと言うより記憶がないよ。


適当に返事しながら全神経を集中してどうしてこうなったのかを思い出す。


と、同時にそれとなく我が身を確認する。


うん、取り敢えず、全裸ではなさそう。


心から安心する。


いや、安心しちゃダメだろ。


兎に角、思い出さなきゃ。


昨夜、昨夜……確か話が盛り上がって、それでついついお酒がすすんじゃって……


それからーーーー


どうしたんだっけ？


アァ〜、思い出せない。








「昨日の夜のこと、覚えてます？」


「ひょっ、き、昨日でございますか？」


動揺しすぎて言葉がまともに出てこない。


さすがに全く、覚えておりません……とは言えないよねぇ。