暫定彼氏〜本気にさせないで〜
「そうだよ。聞いた時はショックだったし、目の前が真っ暗になった。」


「うん、ごめん……」


陽日が弱々しく言う。


そんな姿の陽日を見るのは辛い。


「だけどこうして話を聞いた以上、今は陽日が心配だよ。この先、どうするの?うちの会社にもお父さんの会社にもどっちにももどれないんじゃない?」


それまで俯きがちだった陽日はパッと顔を上げると


「沙紀さん……なんでこんな状況でも俺の事、心配してくれんの?もっと怒れば良いじゃん。俺、酷い事したのに……。」


苛立たしげに言う。


だけどーーー


怒るわけないじゃん……


「だって、自惚れかもしれないけど陽日から貰った優しさはいつだって本物だったもん。」


それは本当だ。


何もかも全てをビジネスの為だとは思いたくない。


私の考えが甘いのかもしれないけど。







私の言葉に陽日が遠慮がちに言う。


「沙紀さん……俺、こんな事調子良すぎるって分かってる。だけどこれだけは言わせて。」


「なに?」


「俺、沙紀さんには絶対本気にならないって決めてたんだ。本気になったって先がある訳じゃないし、適当に付き合って情報掴めば俺は自由になれるって思ってた。」


やっぱりそんな風に思ってたんだ……。


改めて聞くとやはりキツい話だな。






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