暫定彼氏〜本気にさせないで〜
真実を陽日自身から聞いて何て答えればいいのか分からない。


ただ、上唇をぎゅっと噛み締め気持ちを少しでも落ち着かせようとしてみる。


陽日の目の前で泣くわけにはいかない。














「だけど予定が狂ったんだ。俺の中で……」


「えっ?」


陽日はとても穏やかな顔で話を続けた。


「一緒に行った遊園地で…あの観覧車の中で沙紀さんに抱きしめて貰った時から俺ーーーー本気で沙紀さんを振り向かせたいって思ったんだ。先は望めないかもしれないのにそれでも沙紀さんを振り向かせたかった。」


「陽日……。」


「いくら言っても信じて貰えないかもけど、沙紀さんへの気持ちは本当だよ。許してもらえなくて当然だけどそれでも今、こんな状況でも沙紀さんを俺の手でキツく抱きしめたくて仕方ない……。」


私はゆっくりと立ち上がると陽日の方へ近付く。


陽日の隣に座ると驚いた顔で私を見る。


膝の上でギュッと固く握りしめられた陽日の手を取り私から陽日を抱きしめる。


あの時と同じだ。


私よりも大きな体が小さく思える。


あの時も、私は思ったんだ。


この人の何か足りない部分を埋めてあげられるんじゃないかって。


欠けてしまった心を繋いであげられるんじゃないかなって。


それが何なのか分からなかったけど、それでもそう思わずにはいられなかった。


観覧車の中で陽日の体を抱きしめた時、私の思いは既に動き出していたんだと思う。









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