暫定彼氏〜本気にさせないで〜
待っている間、これといってすることもなく何となく本棚に目をやった。


書斎にある本棚には訳の分からない本が沢山あった。


手に取って見る気もしないような金儲けの本ばかりだ。


如何にも父親らしい本棚だ。


「待たせたな。早速本題に入ろう。」


漸くパソコン画面から視線を外すと父親は俺を見て言った。


「例の件はどこまで進んでいる?」


やはり、その話か………。


俺が全く何も言わないのでそろそろしびれを切らしていたのだろう。


「その件ですが……やはりこういうやり方っておかしくないですか?」


「なんだ、上手くいってないのか?女の一人や二人手懐ける事も出来んのか。」


「その考え方がどうかしてると思います。」


「お前、もしかして逆に骨抜きにされたか?会長の孫娘に。」


呆れた顔をして父親が言った。


「だったらどうなんですか?」


「いや、それでも良いだろう。いくらでも使い道はある。」


冷たい表情で言い放つ父親にうんざりするも、ちゃんと自分の思いをぶつけてみる。


「彼女との事はビジネスと切り離したいんです。確かに俺は彼女に夢中です。」


俺の言葉に少し父親の表情が歪んだ気がした。


けれどそれは俺の言葉を決して喜んでくれたものではない。


「お前はまだ分からないのか。女という生き物がどれほど愚かなものか。」


憎しみを顕にした父親が吐き捨てるように言った。







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