暫定彼氏〜本気にさせないで〜
「あのぉ……それはどう言った意味でしょうか?」
「どういったも何もまんまだよ。結婚を前提に一緒に暮らすってこと。」
「けっこん?」
あまりにも突然の事でけっこんという響きが一瞬頭の中で血痕の字に変換されそうになる。
血痕だとしたらおどろおどろしい話だ。
けれど当然そんな意味ではなくて……
「そう、結婚。でもまだ俺、こんな状態だし直ぐにって訳にはいかないけどどうせ何れはするんだからさ、一緒に住んじゃえば良いんじゃない?」
まるで…………
米粉の唐揚げカラッとしてて良いんじゃない?とでも言うかのようにさらっと凄いことを言ってくる。
「いや、でもよ、そんな大事な事、簡単に決めて良いの?」
「えっ、沙紀さん俺と結婚する気ないの?」
「ううん。そんな事ない。私も何れは陽日とーーーそうなりたいって思う。」
だって年齢的にも今年30だし……そりゃ色々と考えるよ。
「じゃ、決まりね。ゴールデンウィーク中に部屋探そう。」
「えっ、ゴールデンウィーク中に?そんな急になの?」
「良いじゃん。俺と沙紀さんいつだって急な事ばかりなんだし。よし、そうと決まったらご飯食べたら出掛けよう。いただきまーす。」
私の作ったご飯を美味しそうにバクバク食べ始める陽日。
そっか………
いつだって私達、急な事ばかりだったもんね。
最初の告白と言い、キスと言い、初めて結ばれた時すらもーーー
一緒に暮らすとこうして陽日が美味しそうに食べる顔をいつも見られるんだ。
「うん、部屋探しに行こう。いただきまーす。」
私も大きな口を開けてパクリと唐揚げを食べた。