暫定彼氏〜本気にさせないで〜
「兎に角、仕事とプライベートはきちんとメリハリつけたいの。ね?お願い。」


と、自分でも寒くなるような上目遣いをしながらお願いしてみる。


「わ、分かりました。」


そう言うと陽日はまた黙々と定食を食べ始めた。


だから、その顔を赤くするのマジで勘弁してよ。


調子狂うなぁ……。


兎に角、早く食べて社食から出ていかなくちゃ。







「藤枝課長とは何かあるんですか?」


例のごとく、穏やかな笑顔で聞いてくる。


「えっ?」


「朝、あれからもう一度、俺戻ったんですよ。」


「どういう事?」


「連絡先、交換してなかったなって思って。そしたら何か課長と訳ありな感じだったから。」


嘘……見られてた?


「な、無いわよ。別に何も。変に勘ぐったりしないでよ。」


「別に勘ぐっていません。俺は見たまんまを言ってるだけですよ。」


なんか一番見られたくない人に見られちゃったなぁ。


でもここはシラを切るしかない。


「本当にちょっと仕事の話をしてただけよ。」


「そうですか。沙紀さんがそう言うなら、そう言うことにしておきます。後、これ俺のアドレス。登録必ずしておいてください。それから沙紀さんのアドレスも知りたいので夜、必ず連絡してください。」


小さな紙切れをスーツのポケットから出すとこちらへと寄越した。






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