暫定彼氏〜本気にさせないで〜
***


ほぼ定時で業務を終えた私は彼、加藤 陽日(かとうはるひ)が指定した店に先に来ていた。


会社から比較的近くの和食屋さん。


店内は落ち着いた雰囲気でいかにも大人の店といった感じだ。


急に決まった事なのに、ちゃんと予約がしてあって、名前を言うと奥の個室に通された。


やはり加藤 陽日は噂通り、仕事だけでなくこういう事にも段取りがスマートなのね。


もしくは遊びなれてる?とか。


あの顔だもん、あり得るな。


これと言ってする事もなく掘り炬燵式の座敷に座り、一息つく。





………


……………


………………………



来ないじゃん。


一向に来る気配もなく時間は過ぎるけれど、一人で先に頼むのもさすがに何だし、個室という事もあって適当に寛ぐものの未だ彼は現れない。


ーーーーなるべく早く行きますね。絶対行くので帰らずに待っていてください。


相変わらずの穏やかな笑顔と共に彼が昼間言った事を思い出す。





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