暫定彼氏〜本気にさせないで〜
「よしっと、下ごしらえはこんなもんでいいかな。」


スマホで時間を確認するとまだ少しある。


化粧直しでもする?


でもなんか如何にも直しました的な顔で出迎えるのも張り切ってる感が出ててヤダよね。


だけどなぁ、結構脂ぎってるよねぇ…。


電子レンジのガラス部分に映る顔を見てもそれが分かるくらいテカってる。


やっぱり化粧直ししよっと。















ピンポンッ!


げっ、来ちゃった?


ドアの覗き窓から確認すると陽日がニコニコとしながら立っていた。


ガチャ……


「いらっしゃい。迷わなかった?」


「はい、貰ったメモの通りに来たら直ぐに分かりました。まぁ、これから何回も通う事になりますけどね。」


「調子に乗らないっ。」


「手厳しいなぁ、沙紀さん。お邪魔しまーす。」


私に怒られても対して懲りることなく、部屋へと上がる。


「お腹空いてる?直ぐに用意しよっか?それともお茶でも出そうか?」


「めっちゃ、腹減ったぁ。この為に朝飯抜いてきたから。」


「本当?じゃあ、急いで支度するからそっちの部屋で適当にテレビでも見ててよ。」


奥の部屋へ案内しようとすると


「ここで沙紀さん、見てる。」


と陽日。


「えっ、でもここ狭いし座るところも無いし。」


うちのキッチンは陽日の家のキッチンよりちゃんとしているけれど、それほど広くはない。


私が困った顔をしていると


「ダメ?」と頗る甘えた顔で聞いてくる。


なんだろ、まさに仔犬じゃない……。


「仕方ないなぁ。じゃぁ、あまり近づかないでね。危ないから。」















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