暫定彼氏〜本気にさせないで〜
下ごしらえしていた事もあり、スムーズにそれぞれ仕上げていく。


チキンライスを丁寧に卵で包み、今日はケチャップではなくデミグラスソースを用意している。


冷蔵庫からサラダを取り出し、自家製の人参ドレッシングも用意。


丸ごと人参一本をすり下ろしていて、とってもヘルシーなドレッシングだ。


私がテキパキと動いている様子を狭いキッチンの壁にもたれてじっと見ている陽日。


何故か浮かない顔をしている。


「どうかした?腕なんか組んで難しい顔してるよ。」


「えっ、ああ……。なんか、俺の知らない誰かもこうして沙紀さんに手料理作って貰ってたのかなぁって考えたら妬けてきて。」


「はっ?妬ける?」


「そっ、キッチンでこんな風にしたりとか?」


そう言うと私の手を取り体ごと引き寄せる。


「きゃっ、ちょっと何すんのよ。」


「ちょっとくらい良いじゃん。減るもんじゃなし。」


「減るもんじゃなしってなんなのよ……。」


離れようとしたら更にギュッと抱きしめられた。


「ちょ、ちょっと………」
 

私よりも頭一個分背の高い陽日は私の頭に顎を乗っけてくる。


お陰で私は完全に陽日の腕の中にすっぽりと収められてしまって。


陽日がほんのり付けている男の人にしては少し甘めの香りが擽ったく感じる……。


「こうしてるとすげぇ、落ち着く。」


頭の上から陽日の声が降ってくる。


「えっ、落ち着くって……」


「この前の遊園地の時もだけど、沙紀さんにこうしてると俺、すげぇ、落ち着くんだよな。」


「ふ、ふぅん。そうなんだ。」


なんか、そんな風に言われると抵抗するのもなぁ。







 






「このまま、押し倒しちゃおうかなっ。」


「調子に乗るなーっ!」


いかん、いかん、つい油断してしまった。




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