暫定彼氏〜本気にさせないで〜
「沙紀さんもしかして、凄いの来た?」
必死でにやけ顔を抑えるも陽日にバレそうだ。
「えっ、いや、どうかなぁ。大したことないよ。」
取り敢えず、しらばっくれなきゃね。
「ほら、あんたどうするの?この勝負降りる?」
だって私はストレートフラッシュですからねぇ
と、心の中で叫びほくそ笑む。
「うーん、どうしようかなぁ。」
やはり、陽日は負けたと見た。
「でも、勝負なんて最後まで分からないわよ。諦めないほうが良いかもよぉ。」
心にもない事を言ったりして……。
まっ、精々、足掻いてちょうだいな。
「いや、どうしよぉかなぁ。」
「そんな、男が弱気でどうするの。勝負は正々堂々とやらなきゃね。ほら、私から出そうか?」
さぁ、見てなさい。
私のストレートォフラーーーッシュッ!
気分はくるくると回転しながらバックに蝶々と花びら散らすが如く……ってまぁ、普通にテーブルに置いただけだけどね。
「ごめんねぇ、私、ストレートフラッシュなんだ。」
私が出したカードをじっと見つめる陽日。
そうか、そうか。
負けを認めたく無いんだね。
でもこれも、勝負だからね。
諦めてくれたまえ。
「沙紀さん、ごめん。」
「いいの、いいの。どうしても負けが嫌なら降りて良いのよ。」
勝負には綺麗な身の引き際も時には必要よ。
「じゃなくて、降りないよ。」
「ん?降りない?えっ、勝負するってこと?」
「うん。だってほら。」
陽日のカードを見るとーーーー
なんと、最強のロイヤルストレートフラッシュだった……
ま、マジで?
テーブルに出されたカードを食い入るように見る。
♥10、♥J、♥Q、♥K、そして♥のA………
♥のAどおりで出てこなかった訳だ……
「いやぁ、だからさぁ、迷ったんだよね。これ、勝っちゃうとキスだし?」
そ、そうだ。
忘れてた。
キス賭けてたんだ……。