暫定彼氏〜本気にさせないで〜
「スイマセンでした、お待たせしちゃって……もう帰ったかと思っていたのでーーー凄く嬉しいです。」


そう言うと、早速、出された生ビールのジョッキを軽く持ち上げ


「乾杯しませんか?」


と、少し息が整ったのか、笑顔で言ってくる。


「えっ、ああ…うん、そうね乾杯ね。」


カチン……


軽く合わせられた2つのジョッキ。


て言うか、何やってんだ私。


そもそも何で昨日まで、いや、今日非常階段ですれ違うまでロクに話したことも無かった人と何を呑気に乾杯してビールなんか飲んでるんだろ。


それに何で来たのよ、あんなにも汗掻いて息を切らせて。


私をからかってたんじゃないの?


うーん……それとも他に何か目的でもあるのかしら。


お金?


年上女に貢がせようと思ってる?


自慢じゃないけど私、お金無いからね。


今年に入ってから友達へのお祝いが半端ないからね。


私クラスになってくると、もう結婚祝いって言うよりほとんど出産祝いとかだし。


自慢じゃないけどそのお陰で子供がいる訳じゃないのにやたらと子供服のサイズとか詳しいし。


見れば大体のセンチ分かるからね。


ってまぁ、それはさておき……


どう考えても腑に落ちないのよね。


なんで?


なんでこんな事になってんのよ。


ああ、もお、いくら考えても訳が分からない。


よーし、こうなりゃ、向こうに貶められる前にこっちがさっさと裏の顔とやらを暴くしかないようね……。


私は今一度、気を引き締めるとジョッキを一気に空けた。








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