嫌いになりたい
「はぁー…幸せ」


元々飲むのは好きだけど、こういう飲み屋の雰囲気も大好きだからだ


「ははっ。お前、相変わらず男前な飲み方するよな」


「男前ですみませんねー」


女らしくないのは自覚済み

だから男の人とほとんど付き合う機会がなかったわけで


「女らしくって…よく分かんない」


ジョッキをテーブルに置き、視線を永野くんの後ろの方に向ける

彼の斜め後ろのテーブルでは、こちら側を向いているスーツ姿のおじさんが真っ赤な顔をして大きな声で笑っていた


「………」


「何よ」


ジッとあたしを見つめる視線に気付き、焦点を永野くんへと移動させる


「いや、別に………」


「恋愛したいとも、結婚したいとも思わないもん」


何も聞かれてもないのに、言い訳するみたいに呟いた

そう宣言することで、恋愛経験に乏しい自分のことを正当化しようとしているあたし


「俺は………宇佐美は宇佐美のままでいいと思う」


頬杖をつき、あたしから視線を外さない彼
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