嫌いになりたい
「あ、ありがと」


上手くはぐらされた感は拭えないけれど、香ばしい匂いに胃がキュッと締め付けられる


鶏皮にビールって最高ーっ


脂っこいものでもまだまだ平気

飲んで食べて

頑張ったご褒美!


「エイヒレと言えば、日本酒だろ」


お互いジョッキが空になったところで、永野くんがメニューを取り出しボタンを押した

体育教師とあって、永野くんもお酒を浴びるように飲む

けれど───


「宇佐美ぃー」


「明日休みだからって、ハイペース過ぎるよ」


9時を過ぎた頃には、真っ赤な顔で机に突っ伏す永野くんの姿

日本酒に焼酎と、ろくに食べもせずアルコール度数の高いものばかり飲んでいたからか、完全に出来上がってしまっていた


「永野くん、お水」


「んー」


「もう帰る?タクシー捕まえてあげるけど」


「まだ帰るわけねーだろ」


勢いよく顔を上げた永野くんの目は虚ろ


「ねえ、帰ろ」


トレンチコートを羽織り、伝票を掴む

永野くんの横に回り腕を引っ張ると、ずるりと体が倒れ込んできた
< 16 / 69 >

この作品をシェア

pagetop