嫌いになりたい
「ちょっ…」


「おー、悪い悪い」


へらへらと笑い、体勢を立て直そうとする

それでも腕に力が入らないのか、なかなか立ち上がらない


「宇佐美って、いー匂いすんのな」


あたしのお腹に凭れかかる永野くんの頭

いくら酔っ払ってるとはいえ、これ以上はベタベタされたくない


「…帰るよ。───っ」


溜息を吐いた瞬間、腰に腕を回され体が強張った


「永野くん!」


抗議の意味も込めて少し強めに名前を呼ぶと、困ったように笑いながらあたしを見上げた彼と目が合う


「………ゴメン」


するりと離れた腕


そんな風に謝られたら、それ以上何も言えないじゃん


気まずい空気のままお会計を済ませ、千鳥足の彼の腕を引っ張り車道に目を凝らした

外気に触れ、火照った頬が冷やされていく


金曜だし、なかなかタクシー捕まらないな…


「宇佐美ー」


「何?」


「金、払ってくれたんだろ」


隣を見上げると、一万円札を差し出してきた
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