嫌いになりたい
※※※



電車に乗り、最寄り駅を目指す

時計に目を落とすと、もう10時を過ぎていた

この前あの辺りを通った時、時間はまだ9時頃


どう見てもホストだったし…

引っ掛かれば誰でもいいんだよ…きっと


駅前の賑やかなネオンサイン

高層ビルに設置されている、赤い航空障害灯

何棟も乱立する高層マンションの部屋の灯り

いくつもの光が、瞬く間に車窓の端から端へ流れて消えていく


でも『来るまで待ってる』って言ってたし…


何度も耳の奥で響くサクの声


………居るわけないじゃん


そう思うのに───

結局、足はあの場所へと向いていた


「やっぱり来てくれた」


「………何で居るの?」


最寄り駅に着き、自宅とは反対側にあるこの場所へやって来ると、あの時の言葉通りそこにはサクが居る


「来るまで待ってるって、言ったじゃん」


柔らかい笑顔

今日は寒いのに、サクは胸元の空いた黒いシャツに薄いジャケット姿
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