嫌いになりたい
「───ビ?こーら、寝ない」


意識がハッキリすると、目の前にはサクの顔

チュッと音を立てて唇に落とされるキス


「そんなに良かった?」


笑顔であたしの顔を覗き込みながら、丁寧に身体を拭いてくれる

その言葉に黙って首を縦に振った


『一回も二回も一緒だろ』


不意に甦る声

もう恋なんてしない、と思った8年前の苦い記憶


「サクはホストってだけあって、女慣れしてるよね」


「何それ?」


「んー?………だって…」


8年振りなのに、あの時抱いた感情とは全く違う


「あたし…男の人に体開いたの、二回目だもん」


意味が分からないとでもいうように首を傾げるサク


「サクの前にしたのはね、8年前に一回だけなの」


「8年前?!」


さすがに驚いたらしい

サクの表情になぜか笑いが込み上げてきて、あたしはフフッと笑った


「トラウマだったの。恋愛も体の関係も………」


初めての彼氏だった

すごく好きだった

だからこそ立ち直れないほど傷付いたし、もう人を好きにならないって決めたんだ───
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