嫌いになりたい
あたしと彼───楠木健太(くすのきけんた)が付き合っていることは、あっという間に知れ渡ることになる


「亜ー弥」


それでも、大好きだった健太からそう呼ばれることは、あたしにとって幸せ以外の何物でもなかった


「ん?」


今日はクリスマスイブ

冬休みに入り、一緒にイブを過ごそうと誘われ健太の部屋に居る

あたしはソファを背もたれにしてラグの上に体育座りで、健太はソファに寝転んでいた


「そろそろ…いい?」


「『いい』って、何が?」


何のことか分からず、彼を見上げ質問に質問で返す


「だから…さ………」


彼が起き上がり、真横に座った

ラグの上に置いたあたしの手を、上からそっと握り締める


「俺………亜弥とそういう関係になりたい」


放課後の教室で告白してから3ヶ月

一緒に居る時はいつも手を繋いでいたし、毎日別れ際にキスをしていた

だから、体の繋がりだっていつかは…なんて思っていたけれど

過去に付き合ったことがないから、どうしたらいいのか正直分からなかった
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