嫌いになりたい
「ねえ。『サク』って、どういう意味でつけたの?」


健太とのことを上書きするかのように、サクのことを聞く


「『朔』は『新月』だから。太陽から光を浴びて、地球からまったく見えなくなる『月』が俺みたいだな…って」


困ったように笑いながら、遠くの方を見るサク

その視線を追うと、窓の外を向いていた

煌々と輝く月

真っ暗な部屋を照らすそれとは違う、と言う彼


「サクのこと………あたしはちゃんと見えてるよ?」


胸が苦しくなって、サクの頬に手を伸ばした


「ありがとう」


その手を取られると、痛いぐらいにギュッと握り締められる


『俺重い女、嫌いなんだ。たかが一回寝たぐらいで彼女ヅラすんの、やめてくんない?』


この前聞いたサクの言葉を思い出すと胸が痛い


相手がホストだって分かってる

だけど───


「ラビ」


「ん?」


「二人で居る時は、俺のこと『章吾(しょうご)』って呼んで」


「ショーゴ?」


「そう。『文章』の『章』に、漢数字の『五』と『口』で『吾』」


───章吾…


「それって、本名?」


あたしの質問に黙って頷く
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