嫌いになりたい
いきなり何よ…


そう思いつつも向かうところは同じなので、黙ったまま並んで歩く


「永野先生、宇佐美先生、おっはよー!」


「はよーっ。前向いて走らないと、危ないぞー!」


あたし達の方を向き、横を走り抜けて行く女子生徒

両手で丸を作り、口元に当てて叫ぶ永野くん


「おはよー、急いで転ばないようにね!」


あたしも笑顔で声を掛けた

背中を向けた彼女が、大きく手を挙げる

中学生になると反抗期の子も多くて大変だけど、基本的に素直でいい子達ばっかりだ

永野くんは体育教師、あたしは学校事務の職員で教師ではない

けれど、皆があたしのことを『宇佐美先生』って先生扱いしてくれる

そんな可愛い生徒達に囲まれて毎日を過ごせるなんて、本当に幸せ


「今日も一日頑張ろう」


両手を胸の前でギュッと握り締め、自分に気合を入れる


「無理すんなよ」


わしゃわしゃと髪の毛を撫でる永野くんに抗議の視線を送ると、ニカッと爽やかな笑顔が返ってきた


「もぉ…髪の毛ぐちゃぐちゃになるじゃん」


手櫛で髪の毛を整え、もう一度大きく深呼吸をした
< 8 / 69 >

この作品をシェア

pagetop