ナナ色Heart
「大丈夫だよ、不安なんかないよ」

「じゃあ、なに?……もしかして……妬いてんの?」

切れ長の眼が僅かに誘うようで、あたしは恥ずかしくなって眼を伏せた。

「ダメ。こっち見ろよ」

両頬をフワリと包まれて、あたしは彼の顔をゆっくりと見つめた。

「昔の彼女に、妬けた?」

コクンと頷くと、山内君は少し乱暴にあたしを抱き締めて、囁くように言ったの。

「ナナ、可愛すぎ」

「だって……」

「嘘は、つきたくないんだ。けど、不安にしてごめんな」

シトラスの香りが彼の体から漂ってきて、あたしはその香りと体温に、心がフワッと温かくなった。

「大丈夫だよ、平気」

そう、過去に妬いても仕方ないよね。

あたしと山内君は、始まったばかり。

でも、何があっても離れたくない。

しっかり彼を見つめていよう……。
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