ナナ色Heart
瞳を覗き込まれたら、もうごまかせない。

「ちょっと、泣いちゃった」

「アイツのせいか?」

「……」

隼人は珍しくイラついた感じで舌打ちした。

「何があったんだ」

隼人の心配そうな顔を見ると、何もかも打ち明けてしまいたくなる。

でも。

「大丈夫だよ、大したことじゃないし」

隼人は今、凄く大事な時期なの。

もうすぐ県大会だ。

甲子園へ行って欲しい。

あたしのゴタゴタに巻き込んじゃダメなんだ。

「朝練、遅れるよ」

あたしは、頬に置かれた隼人の両手に、自分の手を重ねた。

「心配してくれて、ありがと」

「いつでも相談乗るからな!」

「うん!」

ああ、持つべきものは優しい幼馴染みよね。

あたしは少しだけ、元気になった気がしたの。

……そう、この時はね……。
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