ナナ色Heart
喉がカラカラで、やっと言った言葉は掠れていて、あたしは慌てて咳払いをした。

「ナナ」

柔らかい声がして、山内君はあたしをそっと抱き寄せた。

シトラスの香りに包まれて、胸がキュッと音をたてた気がして、あたしは思わず眼を閉じたの。

「ナナ、ごめんな。嫌な思いをさせて」

「大丈夫だよ……」

「俺の事、もう嫌になった?」

「嫌じゃないよ。でも」

でも、というあたしの言葉に、山内君は僅かにビクッとして、顔を傾けてあたしの瞳を覗き込んだ。

「でも?」

「凄くショックだったし、ムカついた」
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