ナナ色Heart
「玲哉君の弱味につけこんだの?」

彼女は腕を組んで顎をあげた。

「あんな状態で、いつ目覚めるかも分からないのに、治療費を出してやってるのは私よ。恩に報いるべきでしょう?パパの病院にいれば、最新の医療が受けられるしね」

「酷いわ」

怒りに震えながらあたしがそう言うと、有紗さんは、意味が分からないという風に頭を振った。

「パパは私に凄く甘いの。あたしの一言で、玲哉の恋人ひとりくらい、どうにでもなるのよ」

そう言って口をつぐむと、暫くなにも言わずにあたしを見つめた。

長い沈黙のあと、有紗さんはゆっくりとした口調であたしに言ったの。

「蓮は、あなたに渡さないわ。彼は私のものよ」
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