ナナ色Heart
放課後、あたしは図書室に寄った。

真朝さんに何か本を読んであげようと思ったんだ。

……詩がいいかな。

愛の詩集とか。

例えばその詩で、真朝さんが玲哉君との事を思い出したら、脳が活性化して、もしかして、目が覚めるかもしれない。

あたしは少し微笑んだ。

悲しいばかりの心の中で、真朝さんが目覚めることだけがあたしの希望だったから。

よし、この詩集に決定。

あたしは自分の背より高い棚にある詩集に手を伸ばした。

ダメ、届かない。

踏み台か椅子、取ってこよう。

あたしは手を伸ばすのをやめて、のけ反るようにして一歩後ろへ下がった。
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