ナナ色Heart
その時、トンと、後頭部に誰かの体が当たった。

「ごめんなさい!」

あたしは後ろに誰かいたことにすごく驚いたんだけど、振り返ってそこに立っていた人の顔を見て、さらに驚いた。

それが、山内君だったから。

山内君は、綺麗な眼でまっすぐにあたしを見て唇を引き結んでいた。

「ごめん、気付かなくて……」

何にも言わない山内君の傍にいるのがいたたまれなくて、あたしはそこから逃げ出そうとした。

瞬間、無言で腕を掴まれ、そのままフワリと抱き締められた。

いつものシトラスの香りがしない代わりに、山内君自身の薫りがした。

「ナナが、図書室に入るの見たから」
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