ナナ色Heart
「こんな日がいつか来てしまうんじゃないかと、思ってはいたんだ。けど、何億分の1のしかない奇跡を、俺は信じたかった」

あたしは、肩を震わせた玲哉君を見て、思わず彼を抱き締めた。

「最後に目覚めて良かったよね。きっと彼女は伝えなきゃって、思ったんだよ、玲哉君に」

あたしがそう言うと、玲哉君は身を起こしてあたしを見た。

「ああ。真朝のことだから、きっとそうだ」

その時、

「なんでよっ!?」

足音の次に悲鳴のような甲高い声がして、あたし達は弾かれたように入り口を見た。

そこには怒りを顕にした有紗さんが立っていて、こっちを睨んでいたの。

見開かれた眼には、これ以上ない程の憎しみが浮かんでいて、あたしはその激しさに息を飲んだ。
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