ナナ色Heart
「有紗は……脳腫瘍なんだ」
心臓が跳ね上がり、体がヒヤリとした。
「私が甘やかして育ててしまったために、有紗は随分とわがままな性格になってしまった。
それでも、屈託なく天真爛漫で、とても可愛い娘だったんだよ。……脳に腫瘍が出来るまでは」
有紗さんのお父さんは、苦しそうに眉を寄せて続けた。
「彼女の腫瘍はかなり特異なものでね、転移性はまるでないが、手術が難しい部分に出来ているし、大きさが目まぐるしく変化するんだ。大きくなったかと思えば、半分以下の大きさに変化する。こんな腫瘍は世界でも例がなくてね。しかも、独特の分泌物……普通、人間が作り出すことが出来ないホルモンを出す事が分かってね。その分泌物を調べたんだ。少し解りやすく説明すると、その分泌物はガン細胞を抑制する働きがあることが分かってね。ガン細胞から、ガン細胞を殺す作用のある物質が作られるなんて、あり得ない。調べる価値が充分にある。
……けれど、腫瘍の変化に伴い、有紗の性格はどんどん変わっていってしまってね」
誰も、何も言えなかった。
「有紗がああなってしまったのは、私のせいだ。世界に例を見ない、形を変化させる腫瘍、そのせいで分泌される、普通の人間には作り得ない、ガンからガンを殺す作用のあるホルモンの分泌。どれもが研究に値するものだと思い、彼女の手術を先伸ばしにしてしまった。
私は、父親失格だよ」
心臓が跳ね上がり、体がヒヤリとした。
「私が甘やかして育ててしまったために、有紗は随分とわがままな性格になってしまった。
それでも、屈託なく天真爛漫で、とても可愛い娘だったんだよ。……脳に腫瘍が出来るまでは」
有紗さんのお父さんは、苦しそうに眉を寄せて続けた。
「彼女の腫瘍はかなり特異なものでね、転移性はまるでないが、手術が難しい部分に出来ているし、大きさが目まぐるしく変化するんだ。大きくなったかと思えば、半分以下の大きさに変化する。こんな腫瘍は世界でも例がなくてね。しかも、独特の分泌物……普通、人間が作り出すことが出来ないホルモンを出す事が分かってね。その分泌物を調べたんだ。少し解りやすく説明すると、その分泌物はガン細胞を抑制する働きがあることが分かってね。ガン細胞から、ガン細胞を殺す作用のある物質が作られるなんて、あり得ない。調べる価値が充分にある。
……けれど、腫瘍の変化に伴い、有紗の性格はどんどん変わっていってしまってね」
誰も、何も言えなかった。
「有紗がああなってしまったのは、私のせいだ。世界に例を見ない、形を変化させる腫瘍、そのせいで分泌される、普通の人間には作り得ない、ガンからガンを殺す作用のあるホルモンの分泌。どれもが研究に値するものだと思い、彼女の手術を先伸ばしにしてしまった。
私は、父親失格だよ」