ナナ色Heart
「おせーよ」

「ごめんっ」

あれこれと考えていると、用意が遅くなっちゃったんだよね。

山内君はあたしを見て、ホッと息をついた。

あたしはチラッと山内君の顔を見たけど、直ぐに視線をそらせた。

眼を合わせないようにしながら、お弁当を渡すと、あたしは歩き出した。

「ナナ」

「……」

「待てって」

待つもんか。

いたぁっ!

急に髪の毛を引っ張られて、あたしは思わずのけ反った。

それから引っ張られた地肌を撫で撫でしながら、ムッとして山内君を睨んだの。

「なに」

山内君は端正な顔を傾けて、両目を細めると口を開いた。
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