ナナ色Heart
動きのキレといい、ダイナミックさといい、ステップの技といい、何もかもが他の出演者とは、格段に差がある。

凄く、うまい!

多分、心の底からダンスが好きなんだろうなって、思った。

無心に躍り続ける彼は、音楽に乗せて体を動かすと言うよりは、自分のダンスで音楽を操っている感じだった。

彼のダンスのせいで、この曲が売れるかもって思えるほどだったの。

上手いだけじゃないんだ、彼はきっと、踊るために生まれてきたんだ。

あたしは、涙が出た。

何だか分からないけど、感動して涙が溢れてきちゃって、自分でもビックリした。

「おい、ナナ、お前映ってるぞ」

歓声にかき消えそうな隼人の声がして、彼は同時にスクリーンを指差した。

え?

スクリーンには、見事に泣いているあたしが映し出されていた。
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