X.x…real
頬を何かがかすめた。
生ぬるい何かが頬を伝う。
だがそんなこと気にしていられない。
ヒュウと風を切る音がして,俺は足を早めた。
ほんとにここいらは荒野だ。
都会の神々しさはどこへやら。
背後から迫る機械音は,離れることも,近づくこともない。
一定の距離を保って俺を追いかける。
走り続けて,
風向きが変わった。
正面からの,目を乾かすような風は,
俺の漆黒の髪の毛を逆立てる,足元からの風に。