オフィスの華には毒がある
「俺達、両思いなんで「違います」


『両思いなんですね?』と言いたかったであろう、最後の疑問形を言い切る前に被せる形で遮る。


「楽し、かった、って言ったの。単純に、社内で話すとき。ただそれだけ」


それなのに、あんな思いをさせられて。

……これってうまく伝わらないなー。


「一旦付き合いましょう、俺達」


「嫌です」


「好きな人、いるんですか?」


「……」


返事に詰まる。
ここはポンポン被せて逃げ切りたいのに。

同じように、夜の道を歩きながらだからなのか、この間の主任の顔が浮かぶ。

……そして、キスをしたシーンも。


おいおいおーーーい!
そんな理由で口ごもってる場合じゃないっつーの。
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