オフィスの華には毒がある
善は急げとばかりに、にこにこして提案してくるその勢いは、若さゆえなんだろうか。
それとも、彼の特性なんだろうか。

そして、妙齢の女子に向かって、急に次の日のお休みが、空いているのを前提で話すなんて、舐められたもんだ……って言うか、空いているんだけど。


「明日……」


「はい、じゃあ、明日お昼の12時に、ここで」


「ここで?」


「家まで迎え行くとかしたいけど、那奈さん嫌でしょう?俺のこと信用してないだろうし」


信用していない、は、図星かもね……。


「かわいい格好してきてくださいね」


「なにその無茶なドレスコード」


「あ、何着てもかわいいけど……」


……そういうことをさらっと言えちゃう人種っていうのは、本当に存在するんだな、としみじみ思う。
< 173 / 312 >

この作品をシェア

pagetop