オフィスの華には毒がある
話がまとまったところで、丁度駅に着く。


「俺のこと信じられなくても、それは当然です。だから、明日、来てくれなければ、それはそれで、諦めますんで」


「……うん」


「こうやって、話せただけでも、満足なんで、大丈夫です」


「……うん」


「それじゃあ」


爽やかに、片手を振り上げ、足早に立ち去る斉木くん。

その後ろ姿は、やっぱりかっこいいと思わせる空気をまとっていて。


騙されるとか、そういうどろどろしたものとは全く無関係に見えてしまって。


だけど、彼の言葉を鵜呑みにするのなら、そんな彼はわたしのことが……好きっていうことで。

いや、それはいくらなんでも。
ババアを落とすという賭けがばれたのを取り繕うにしては、大がかりな嘘だと思う。

そんな嘘をつくくらいなら、はじめからやらなきゃいいわけで……。
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