オフィスの華には毒がある
「別荘ー?酔っ払いは言うことがでかいなー」


「いや、なんですかその、下手くそな返し。ていうか、なんで一人で残業なんて……」


わたしの言葉を受けて、主任が、気まずそうな顔をする。

何なのよ、さっきから。


「主任は、きっと遠藤さんが苦手なんですよね、ふふふ。たまにおっかないけど、遠藤さんいい人ですよ、ねー?」


いや。わたし本人に同意を求められましても。

……て言うか。

苦手ってなに?苦手って……


地味に、でも確実にダメージを受けたせいで、思わず黙ったまんま、主任を見つめてしまう。


塩井くんは、寝ている環を気にかけて、散々言い放ってから『大丈夫かなぁ~』などと言いながら環のもとへ行く。


「いや、ちょっと……あーもー、ダメだあいつ、思ったより酔っ払ってるかも」


わたしが苦手だから、一緒に残業したくないから、一人でこっそり籠ってたっていうこと?……なにそれ、なんかものすごく辛い。


「あ、なんか誤解してるだろ?違うぞ、ほんと」

慌てる主任。別に、取り繕わなくていいのに。
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