オフィスの華には毒がある
「バカか、お前」


パチコン、と乾いた音が響く。

主任が、塩井くんの頭を叩いたらしい。
二人はハハハと笑いあい、早速タクシーを呼ぶか停めるか……と話が進んでいて。


幸い、駅からそんなに遠くない大通りなので、タクシーはすぐに捕まりそう。


環はここから少し距離はあるものの、実家住まいだから、塩井くんの言うような『過ち』は起きないだろうという安心感もあり、お願いしようかな……という気持ちが働く。


しばらく夜風に当たっていたせいか、環がうっすらと覚醒し、喉が乾いた等と騒ぎ始めて。


「三上を無事送り届けたら連絡しろよー、んでぐるっと回って家帰れ」


言いながら主任が塩井くんに何かを渡す。


「あ、わたしも払いますよ!塩井くんに環を丸投げしちゃうのは心苦しいし」


「いいんだよ、方角的に同じだもん。な?」


「はい、大体合ってます」
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